2016年8月24日

マイナースポーツ振興とクラウドファンディング: 辻野晃一郎コラム[2016年8月24日配信バックナンバー]

リオ五輪が閉幕しましたが、BMX(Bicycle Motocross)という五輪競技をご存じでしょうか?20インチ径の自転車を使ったスポーツで、タイムを競う「レース」とパフォーマンスを競う「フリースタイル」に分かれますが、レースは2008年の北京五輪から正式種目として採用されています。
この競技との出会いは、二年ほど前、当社の「COUNTDOWN」というクラウドファンディングのサービスに池上悠斗・泰地という兄弟選手がエントリーしてきたことが縁になっています。弟の泰地君は、世界選手権や日本選手権のジュニア部門で常に上位の成績を残す将来有望な選手で、東京五輪出場を目指しています。

クラウドファンディングは、日本ではまだなじみが薄く調達できる金額も限られますが、インターネットを使って広く薄く資金調達する新しい仕組みです。米国などでは一つの資金調達手段として市民権を確立し存在感を高めています。これを日本で定着させることは、チャレンジする人、すなわち「出る杭」を応援する土壌を作っていく上で意義のあることだと考えています。

欧米では人気のBMXですが、日本では競技人口が少なく、競技用コースも限られたマイナースポーツです。その為、世界に通用する選手を育成する環境が整っておらず、海外での合宿や遠征等を積んで外国人選手と日常的に競い合わない限りトップクラスの選手にはなれません。度重なる海外遠征費や活動費の捻出に苦労していた二人が行きついたのがクラウドファンディングだったというわけです。

幸い、この時の資金調達の試みは見事に成功して目標を上回る130万円以上を集め、二人はオランダや中国などへの海外遠征費や活動費を補填することが出来ました。常に資金難に苦しむマイナースポーツですが、オリンピックのメダリストなど世界に通用するトップアスリートが生まれれば注目を集め、経済効果も見込めるでしょう。クラウドファンディングのような手段を通じて、不特定多数の一般大衆の支援がマイナースポーツの世界で五輪のメダリストを生み出すようなきっかけになれば素晴らしいことだと思います。


辻野晃一郎コラム

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2016年8月2日

ポケモンGOへの期待: 辻野晃一郎コラム [2016年7月27日配信バックナンバー]

7月22日に日本でも配信がスタートした「ポケモンGO」は、またたく間に、新たな社会現象ともいえる熱狂的なブームを世界中に巻き起こしました。任天堂の株価は一時高騰し、新たな集客手段としての活用など、ポケモンGOがもたらす経済効果への期待も高まって「ポケモノミクス」という言葉も使われました。過度な没入による事故・事件の話なども含め、ちまたはポケモンGOを巡る盛り沢山な話題で溢れ返りました。スタート直後はツイッターやフェイスブックのタイムラインもポケモンGO関連の投稿で埋め尽くされ、それらを見ていると、普段、スマホのゲームとは無縁の年配者も目立ちました。

ポケモンGOの開発を行った米ナイアンティックは、2010年にグーグルの社内ベンチャーとしてスタートし、2015年に独立したベンチャー企業です。スマホのGPS機能とグーグルマップをベースに、「この世界には世界制覇を競う2つの勢力がある」という設定で、地図上の仮想の拠点を実際に訪ねながら、緑組と青組に分かれて奪い合う陣取りゲーム「イングレス」を開発しました。ポケモンGOの前身ともいえるもので、3年間に世界中で1400万以上ダウンロードされ、現在もユーザー数を増やし続けています。先日は東京お台場で1万人以上のプレイヤーを集めた盛大なイベントも開催されました。

グーグルアースやグーグルマップ、ストリートビューなどでは、コンピュータの前に座ったまま世界中どこにでも行けるバーチャル体験が可能になりました。一方、ナイアンティックは、”Adventures on foot(自分の足で冒険しよう)”が理念で、スマホを片手に自ら外に出掛けてリアルな世界を体感するアプリケーションにこだわっています。

イングレスに加え、ポケモンGOの登場で、人類は拡張現実(AR)が作り出す世界に新たな一歩を踏み出しました。家から出ることがなかった人達が、外に出て歩き、移動し、会話し、実際の世界を見る、ということはそれだけでも素晴らしいことです。歩きスマホやながらスマホで事故の加害者になったり被害者にならないよう、安全確保には十分に注意する必要がありますが、ナイアンティックがポケモンやユーザーと共に切り開く未来に期待したいものです。


辻野晃一郎コラム
このエントリーは2016年5月25日配信のALEXコーポレートメールマガジンのバックナンバーになります。メールマガジンの購読を希望の方はこちらのフォームからお願いいたします。