2015年10月21日

「未病ビジネス」への参入について: 辻野晃一郎コラム [2015年10月21日配信バックナンバー]

バイオ産業ではアジア最大規模の国際展示会「BioJapan 2015」が、10月14日から16日までの3日間、横浜市みなとみらいの「パシフィコ横浜」で開催され、当社もブースを出展致しました。創薬、個別化医療、再生医療、診断・医療機器、ヘルスケア、バイオエネルギー、機能性食品等の分野で、世界30カ国から700社ほどの企業が出展しましたが、今回、神奈川県が、この展示会場の一角を使って、初めて「ME-BYO Japan 2015」を開催し、国内各社や研究機関の「未病」に対応した製品やサービスを紹介しました。 当社では、縁あってこの神奈川県の取り組みに協力することになり、これを機会にこの分野にも参入することに致しました。「未病ビジネス」は、従来の予防、診断、ケアのアプローチに加えて、人工知能やビッグデータの応用分野としても有望ですが、「未病」というキーワードのもと、新たな価値を新規産業として創出していくことは人類の未来への備えでもあると思います。 未病とは、神奈川県の定義によれば「健康と病気を二つの明確に分けられる概念として捉えるのではなく、心身の状態は健康と病気の間を連続的に変化するものと捉え、このすべての変化の過程を表す概念」とされます。もともとは、東洋医学の考え方で、病が顕在化する手前の段階で、体を健康な状態に戻すべくケアしようという発想です。現在、人類の平均寿命は毎日5時間ずつ延びている、というデータもあり、2050年頃までには平均寿命が100歳を超えるという説もあります。高齢化は驚くべきスピードで進んでいますが、一方で、「平均寿命」と「健康寿命」の間には、現在でも男性で約9年、女性で約13年の開きがあります。加速する超高齢社会の中で、いかに健康寿命を延ばし、将来的な医療費の増大を抑えていくかは大きな課題となっています。 世界一の長寿国家となった日本には、人類の健康増進に有効な素材や技術がたくさんありますが、事業化、産業化、グローバリゼーションという観点ではまだまだ未開拓です。世界人類共通の大テーマに、地方自治体の神奈川県が正面から向き合い積極推進することは、地方創生の観点からも大きな意義がありますが、当社も微力ながらこの分野での貢献を目指して行きたいと考えています。 10月22日と23日には、箱根で「ME-BYO Summit Kanagawa 2015」という国際シンポジウムの開催が予定されていますが、筆者もモデレーターとして参加しますので、また機会をみてその模様もご紹介したいと思います。

辻野晃一郎コラム
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2015年10月20日

安全保障関連法案成立の裏で: 辻野晃一郎コラム [2015年9月23日配信バックナンバー]

安全保障関連法案が参院本会議で可決されました。これにより、我が国の戦後の安全保障に対する立場が大きく転換することになります。多くの憲法学者が違憲と断じる中での今回の法案成立を巡っては、中身の是非に加えて、そのやり方についても立憲主義の否定につながるとして論争となりました。 一方、9月15日から18日まで、英ロンドンで、世界最大級の武器展示会「国際防衛装備品展示会(Defence & Security Equipment International Exhibition: DSEi)」が開催されました。40ヶ国以上から約1500の企業などが参加し、最新の軍事関連商品が出展されて活発な商談が展開されましたが、日本からも8社が出展していて、今回は防衛省も初めてブースを構えました。日本政府は昨年、武器輸出三原則に替えて、条件を満たせば、武器の輸出や海外との技術協力を認める「防衛装備移転三原則」を閣議決定しました。これにより、早速、防衛省や関連企業は、防衛装備の輸出ビジネス拡大に向けたアクションを積極展開しているわけです。安保関連法案成立の背後に、こういう経済活動があることを見逃してはなりません。 戦後、平和憲法の下、戦争放棄した我が国は、「軍産複合体」化した戦前の国家体質を反省し、軍事と経済活動を相容れないものとして切り分けてきました。いわゆる「死の商人」ビジネスとは一線を画してきたのです。しかし、一連の安保関連法案成立の裏で、ついにその歯止めも取り払われました。 「財界の鞍馬天狗」の異名を持つ戦後の経済人中山素平は、90年、湾岸戦争で自衛隊の派兵が論議されていた時、派兵に反対し、「平和憲法は絶対に厳守すべきだ。そう自らを規定すれば、おのずから日本の役割がはっきりしてくる」と言い切ったそうです。我が国を、戦争で儲ける国などに決してしない為、今を生き、未来に責任を持つ経済人の良識が問われていると思います。

辻野晃一郎コラム
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アマゾンの職場環境を巡る論争: 辻野晃一郎コラム [2015年8月27日配信バックナンバー]

今週発売の週刊文春の連載でも取り上げましたが、米ニューヨークタイムズが、アマゾンがブラック企業であるかのような記事を書き、それに創業者でCEOのジェフ・ベゾスが猛反発して傘下のワシントンポストまで巻き込んだ論争になっています。アマゾンの実態はともかく、こういう話はどういう企業にとっても決して他人事ではないですね。 常識を逸脱するような強制やイジメが日常的に存在する会社があれば大問題です。それを解決することは経営者の責務であり、また経営者そのものに問題があれば、それを社会が糾弾するのも当然でしょう。しかし、昨今の風潮で若干気掛かりなのは、一昔前なら当たり前だったような社内教育、上司による指導、仕事そのものの厳しさなども、「ハラスメント」と過剰に騒ぎ立てられて、経営者や企業が一方的にブラックのレッテルを貼られるようなケースが増えてきていることです。社員や元社員が、ネットで自社の悪口を拡散するのも当たり前のようになっており嘆かわしいことです。 精神論じみて恐縮ですが、会社は、社員の日々の努力や貢献に感謝を忘れず、社員も、会社から社会的立場や報酬を得、福利厚生面でさまざまな恩恵を得ている前提に立ち返って、互いに感謝を忘れない。詰まる所、それが良質な企業カルチャーを創る単純原則なのではないでしょうか。

辻野晃一郎コラム
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