2014年10月1日

朝日新聞の件で思うこと: 辻野晃一郎コラム [2014年9月24日配信バックナンバー]

自分の耳に痛いことや厳しいことを言ってくれる人を大事にできるかどうかがその人の器量や成長を決めるのだと思います。昨今、朝日新聞の問題が大きな騒ぎになっていますが、その論評そのものはここでは避けるとして、従軍慰安婦問題で国家と国民の信頼を国際的に大きく毀損した責任は万死に値するものだと思います。福島原発の吉田調書の曲解報道もひどいものです。木村伊量社長の謝罪会見は、単に自社や自分の保身を目的としたものであったことがミエミエで、この会社の体質を一層はっきりと世間に晒してしまいました。

池上彰さんのコラム掲載拒否の一件がわかりやすかったですが、自分に都合の悪いことを握り潰すような体質がすっかり染みついていたのでしょう。公正さが信条の報道機関の資質はもはや完全に失われていたのだと思います。欧米メディアでは、社説と異なる外部有識者の意見をOp-ed(Opposite editorial)と称して掲載しバランスを保つ努力をしています。池上さんのコラムもまさにそのような役割を果たすためのものであったと思います。

しかし、今回のような話は朝日新聞だけの問題でしょうか?人間というのは実に弱く愚かなもので、すぐに勘違いして傲慢になったり、尊大になったりするものです。これを他山の石として、いま朝日新聞のバッシングに躍起な競合メディアや、一般の人達も、普段の自分の態度を振り返るきっかけにするのがいいのではないかと思います。耳の痛いことを直言してくれる人、厳しく批判してくれる人、普段の立ち居振る舞いにこまごまと注意をしてくれる人、そういう人達に対して怒ったり、煩わしく思ったりするのではなく、かけがえのない人達として、謙虚に耳を傾け、心から感謝しているかどうか、ということを。

辻野晃一郎コラム
このエントリーは 2014年9月24日 配信の ALEXコーポレートメールマガジンのバックナンバーになります。メールマガジンの購読を希望の方はこちらのフォームからお願いいたします。