2014年9月18日

イーロン・マスク氏来日: 辻野晃一郎コラム [2014年9月11日配信バックナンバー]

テスラモーターズのモデルSの日本国内発売にちなみ、イーロン・マスク氏が来日したようですね。イーロン・マスク氏といえば、その昔、インターネットを利用した決済サービスを提供するペイパル社の前身となる事業を興した人物であり、最近ではスペース・エックスで商用ロケットの打ち上げにも次々と成功しています。

学生時代、2050年に世界の人口が100億になる予測に危機意識をもった彼は、将来、火星などの惑星に人類を移住させることを本気で構想していると言われています。地球環境に強い危機感を抱き、クリーンエネルギーへの投資にも積極的で、その一つがこのテスラモーターズであるともされています。地球温暖化の元凶でもある二酸化炭素排出問題へのソリューションとして、テスラの電気自動車でガソリン車を世界中から駆逐することをもくろんでいるからです。

8日の六本木ヒルズでの発売セレモニーでは、今回納車となる日本の9組のオーナーに直接キーを手渡したそうです。電池はすべてパナソニック製で、2015年までに日本全国に専用のバッテリーチャージャーも設置していく計画のようですが、既に日本の高速道路SAなどに設置されているEV用の急速充電設備CHAdeMO(チャデモ)規格でも充電ができるようにアダプターも準備していて、これを使えば、約2,000箇所のCHAdeMO規格の充電スポットを利用することもできるそうです。

とにかく、まだ40代前半の天才起業家ですが、とてつもなくスケールの大きな人物です。グーグルの創業者の一人、ラリー・ペイジも、イーロンほど独創的で大胆な男はいない、と述べ、「イーロン・マスクに投資することが最大の博愛だ」とも発言しています。

今回の来日では、自身でツイッターに新宿の「ラーメン二郎」に立ち寄ったことをツイートしたりとお茶目な一面もあります。当面、彼の動きからは目が離せませんね。


(写真は二枚ともhttp://ignite.jp/より借用) 

辻野晃一郎コラム
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2014年9月4日

ALSアイス・バケット・チャレンジ: 辻野晃一郎コラム [2014年8月28日配信バックナンバー]

ALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病に対する理解と支援を目的とした「ALS Ice Bucket Challenge」が世界的に大きな話題となりました。各界の著名人がたくさんこのイベントに共鳴して頭から氷水を被っている映像をSNSでシェアしています。

多彩なセレブ達が氷水を浴びる動画が次々と評判を呼んで、この運動は瞬く間に世界中に拡がり、短期間で日本円にして30億円を超える寄付が集まったようですし(現在進行形)、まさにネットやSNSの威力をまざまざと見せつけてくれたとともに、グローバルスケールでのバイラル・マーケティングの最大の成功事例の一つでもあると思います。また、このような助け合いの輪が世界中に広がっていくこと自体は実に素晴らしいことだと思います。

しかしながら、この運動の発案者といわれる若者が事故で亡くなったり、パフォーマンスが行き過ぎて死者や怪我人が出るなど、この運動を巡ってはさまざまな話題や議論も巻き起こっているようです。夏季の水不足が深刻な米国カリフォルニア州では、チャレンジへの参加は水の無駄遣いとして罰金を課すことにしたとの話も耳にしました。

先日、この順番が、あろうことか、私にも回って来てしまいました。ルールとしては、指名された人は、24時間以内に、氷水を頭から被るか、$100の寄付をするか、どちらかの選択をして、次に続く人を3名指名しなければならないことになっています。私は、氷水を被ることはせずに、おとなしく$100をALS Associationに寄付しました。そして、次に続く3人の指名も見合わせました。

理由はさまざまありますが、端的に言うと、既に過熱気味に世界中が十二分に盛り上がっている中で、更に自分が今さら氷水を被りその映像をアップすることにあまり価値や意義を感じなかったためです。次に続く3人を指名する、というルールも、チェーンメールやねずみ講のようで、指名する人達に余計な同調圧力を掛けるように感じたために、勝手ながら、私に繋がった分岐は私で終わりにすることとさせていただきました。

本当は、もっと気の利いた対応をしてこの運動の盛り上がりにも少しでも貢献できればオシャレなんでしょうが、自分として最も誠実な対応は何かということを考えての結果です。オシャレと言えば、英国の俳優パトリック・スチュアートさんの対応などはいかにも英国紳士らしいスマートなものです。サッカーのブラジル代表 ネイマール選手がワールドカップで自分に怪我を負わせたコロンビアのスニガ選手を指名して因縁を水に流したのも爽やかで話題を呼んでいました。

しかし、この運動の本質がALSの認知を拡げその患者への支援にあるのであれば、実際の患者の皆さんがこの運動に対してどういう思いをしているのかということがとても気になるところです。ネット上では、この運動をあまり快く思っていない患者の方からの意見も目にしました。

現在、世界中には、ALSに限らず、難病で苦しんでいる人達がたくさんいます。また、昨今のシリア、イラク、ガザ、ウクライナなどでの紛争では、多くの一般市民の人達が日々犠牲になる状況が続いています。日本でも、東北地方では未だに多くの被災された皆さんの苦労が続いていますし、先週、広島では未曾有の豪雨による大きな災害も発生したばかりです。そしてそのような世界各地の状況を憂えて活発に活動しているNPOや、Ice Bucket Challengeの盛り上がりをよそに、ボランティア活動などの地道な行動を起こしている人達もたくさんいます。

そもそも、この世には弱者も強者もなく、人というのは一様に一人では決して生きられない弱い存在です。日本には、「互譲互助」という素晴らしい言葉もありますが、「お互い様」という精神でまずは周囲の人達のことを思いやることを大事にしていきたいと思います。その上で、今回の運動も一つのきっかけとなって、世界中の人達が、身の回りや遠く離れた場所で辛い思いをしている人達に対して継続的に思いを寄せ続け、どんな小さなことでも、自分に出来ることを考えて何らかの行動を起こしていく、という助け合いの輪が広がっていくことを心から願いたいと思います。

辻野晃一郎コラム
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