2013年11月17日

米NSAによる盗聴問題: 辻野晃一郎コラム [2013年11月10日配信バックナンバー]

米国家安全保障局(NSA)による盗聴問題の波紋が広がっているが、ここまで来ると、今後のインターネット社会の在り方そのものへの問題提起でもあると感じている。そもそも、歴史的には、国家間での盗聴やスパイ活動などは当たり前の話であって、第二次大戦時にも、その後の冷戦時にも、諜報合戦が国益を大きく左右してきた。しかしながら、今回の米国家機関による盗聴問題は、そのターゲットのすそ野が広く一般庶民にまで及んでいることを明らかにした、ということで重大問題であり、噂されてきたプリズムやエシュロンの実在を裏付ける形にもなった。最近の米国映画で個人の行動や履歴がすべて捕捉されて監視されているシーンがよく出てくるが、これは決して映画の中だけの話ではない、ということである。

報道によると、これにはグーグルのシュミット会長も怒りを露わにして、NSAのほかオバマ大統領、連邦議会の議員に苦情を申し立てたとされている。シュミット会長は、「NSAは危害を加える恐れのある約300人を特定するため、(米国民)3億2000万人全ての通話記録を収集した疑いがある。これは公共政策としてひどいというほかない。(中略)そして恐らく違法だろう」と話している。

また、グーグルのセキュリティシステムに関わるとされる社員も、自身のブログで、「Googleの世界各地のデータセンターをつなぐケーブルから通信を傍受するというNSAのやり方は、法を無視する行為である」、と非難している。

長く平和ボケの続くわが国では、セキュリティに関する感度も極端に鈍くなっており、今回も、NSAのターゲットに日本も含まれていた、という報道に対して、防衛大臣が「信じたくない」という発言をし、官房長官も「事柄の性質上、発言は控えたい。日米間ではしかるべく意思疎通を行っている」と述べるにとどまり、米国に厳重抗議する考えがない様子であるのには違和感を覚える。つまりは、日本国政府としては、我々日本国民の情報が米国の国家機関に筒抜けになっていても、何のアクションも取らない、ということに等しい。

一般庶民としては、今後、電話やインターネット上での自身のやり取りは、すべてどこかの国家機関あるいは第三者によって捕捉されており、電話やインターネットは決して安全な通信手段ではない、ということを強く自覚した上で、自己防衛の策を講じて行くことを考えていかねばならない。結局、自分自身の安全や財産を守るのは自分しかいない、という原点に立ち戻ることしか術はない。大変便利な世の中になったが、その代償もまた計り知れないのである。

辻野晃一郎コラム

このエントリーは 2013年11月10日 配信の ALEXコーポレートメールマガジンのバックナンバーになります。メールマガジンの購読を希望の方はこちらのフォームからお願いいたします。

2013年11月1日

京都高台寺秋の夜のイベント: 辻野晃一郎コラム [2013年10月25日配信バックナンバー]

昨晩、京都高台寺で開かれた日本画家の山岸泉琳さんのイベントにお招きいただきました。山岸さんは、16年前、高台寺の庭に80畳の絵を制作されたそうですが、このたび、秋をイメージした素晴らしい庭画を再び制作され、そのお披露目のイベントでした。

折からの台風の影響で一時は激しい雨となりましたが、イベントが始まると不思議と雨も止み、暗闇からライトアップで浮き上がった山岸さんの画は幻想的な秋の夜を演出してくれました。写真ではその素晴らしさを再現できませんが、一枚添付しておきます。

夜のお寺という不思議な空間の中で華やかな庭画を見ながら、日本の素晴らしさについて改めて想いを巡らせることができました。



辻野晃一郎コラム

このエントリーは 2013年10月25日 配信の ALEXコーポレートメールマガジンのバックナンバーになります。メールマガジンの購読を希望の方はこちらのフォームからお願いいたします。