会社にたとえると、たとえ現在価値が大きくても日々将来価値を生み出すような企業活動を伴わない会社はいずれその企業価値を目減りさせて衰退していく。一方で、設立したばかりで現在価値の小さな会社でも、将来価値が大きくなるような市場やトレンドに目をつけ、日々新たな企業価値を生み出し高めるような活動を積極的に展開する会社は、たとえ最初は苦しい時期が続いても、いずれ大きな価値を社会に還元する存在になり得る。
自分が現在価値を守る立場で仕事をしているのか、将来価値を生み出す立場で仕事をしているのか、という視点は、自分自身のその時々の活動をチェックする時に必ず意識しておきたい。事業活動を行う上で、毎日の生活の糧を得るという観点では、「現在価値を守る」為の行為も極めて重要だが、常に成長する会社であり続けようと考えるのであれば「将来価値を生み出す」為の卓越したビジョンや勇気、その上での覚悟と計画に基づいた経営資源の継続投入が不可欠だ。
そのようなバランスを欠き、日々の糧を得る為の短期的な結果に一喜一憂しつつ、ひたすら現在価値を食い潰すだけの企業に未来はない。日本衰退の一因は、現在価値や過去の栄光にすがったりぶら下がったりする企業が増えて、将来価値を生み出すことに身体を張ったり、命運を賭けるような企業が減ってしまったことにもあるだろう。
アベノミクスの成長戦略の成否は、そのような現状を打破して、新しく元気で将来価値を生み出すことに体を張って頑張る起業家を増やし、その人達を応援する土壌作りとして、資金面でも制度面でも、産業構造の新陳代謝を促進する仕組みを作って行けるかどうか、ということに掛かっている。
辻野晃一郎コラム
このエントリーは 2013年06月10日 配信の ALEXコーポレートメールマガジンのバックナンバーになります。メールマガジンの購読を希望の方はこちらのフォームからお願いいたします。