2013年7月29日

忙しい人と暇な人: 辻野晃一郎コラム [2013年04月25日配信バックナンバー]

昔、千葉敦子さんという素晴らしいジャーナリストがいた。乳癌の再発で若くして亡くなってしまったが、その壮絶な人生は彼女の多くの著書に生々しい。私が彼女の存在を知ったのは、「ちょっとおかしいぞ、日本人」(1985、新潮社)が最初だった。ちょうど、ソニーに入社した直後、会社派遣で米国の大学院に留学するプログラムがあり、それに挑戦して渡米の準備をしていた頃だったと思う。当時、彼女の視点に大いに共感を覚え、それ以来彼女のファンとなった。

どの著作だったかは覚えていないのだが、彼女の本の中に、さまざまな切り口で人を2つのグループに分けて論じたエッセイがあった。その中に、「忙しい人と忙しくない人」というのがあって、「忙しくない人は忙しい人にあれこれ人生相談をする、人生相談をされた忙しい人は、忙しい時間の中からその人の為に時間を割いて親身になってアドバイスをする、でも結局忙しくない人はその忙しい人の親身なアドバイスを聞いても、特に何も行動はしないのだ」というようなのがあった。

私のところにも、別に人生相談を本業としているわけでもないのに(笑)、メールやfacebookのメッセージを通じた見ず知らずの人を含め、さまざまな相談事が持ち込まれる。そうなると、どんなに多忙を極めていても出来る限り力になってあげたい、と思うのが人情だ。しかし、こちらもなけなしの時間を割いてお付き合いする以上、そこから何かをつかみ取って是非具体的な行動に移してほしいものだ、と心から祈らずにはいられない。

もう一つ、「持って生まれたエネルギーレベルの高い人と低い人」というのもあって、「人には何をやってもまったく疲れない人と、何をやってもすぐに疲れる人がいる、エネルギーのレベルの高さ低さは生まれつきのものであって、高いエネルギーレベルで生まれて来た人は、もうひたすら親に感謝すべきだ、、、」というようなのもあった。これも真実だ。特に起業をしてからはつくづくそう思う。起業の世界はまずは「胆力」と「忍耐力」と「体力」だ。それに加えて「知力」と「スピード」だろう。ちょっとやそっとで不安が先行してやる気を無くしたり、体調を壊して寝込んでしまうようならば、最初から起業の世界などには絶対に足を踏み入れない方がいい。モチベーションを保ち続けるエネルギーレベルの高さや、やるべきことを次々と直ちにやるスピードへの貪欲さなど、様々な面で人並み外れたすさまじいエネルギーの持ち主でないと務まらない。

その後、彼女の本を読み直す機会はないが、生前に彼女が残した多くの言葉や記録は、確実にどこか自分でも気が付かないところでの生きるヒントになっている。

辻野晃一郎コラム

このエントリーは 2013年04月25日 配信の ALEXコーポレートメールマガジンのバックナンバーになります。メールマガジンの購読を希望の方はこちらのフォームからお願いいたします。