2013年2月12日

Think Simple:辻野晃一郎コラム [2012年06月25日配信バックナンバー]

弊社のオンラインコマースサイトALEXCIOUSは、 先週の6月21日で公開してから一周年を迎えました。この一年の間には非常に多くの新しい出会いがありました。大勢の皆様に支えていただいたお蔭で何とか無事一周年を迎えることができましたことを心から厚く御礼申し上げます。今後も社員一同、さらにスピーディにかつ力強く日本の価値を世界に発信し続けて参りますので引き続きよろしくお願い致します。

さて、最近出版されたKen Segall著「Think Simple」(NHK出版)を読みました。アップルやスティーブ・ジョブズと長年一緒に仕事をした外部のクリエイティブ・ディレクターがジョブズのスタイルの特徴を10のキーワードでまとめたものですが、これを読んでいると、あまたの日本の大企業が駄目になっていく理由がクリアに説明されているようで非常に面白かったです。日本の大企業だけでなく、マイクロソフト、インテル、デルなどが最近精彩を欠くようになってきている理由も同じです。

その理由を一言で言うと、我々は何事も、物事を複雑にしていく傾向があり、企業も大きくなるにしたがって、シンプルさをどんどん失っていってしまうということです。一方で、ジョブズのスタイルはあくまでもシンプルさを追求することに一切妥協しなかった、ということをさまざまな具体事例を盛り込んで余すことなく説明しています。私もソニー時代、グーグル時代の経験に照らし合わせてまさにその通りと感じました。たとえば、家電量販店に行って、PC売り場にでもTV売り場にでも行くと、各社のあまりにも多くのモデルが並んでいて一体どれを買っていいか迷った経験は誰にでもあるでしょう。オンラインショッピングの場合も同じです。それに対して、アップルのノートPCはMacBook ProとMacBook Airしかなく、それぞれに画面サイズ等のスペックの違うモデルが2モデルずつあるだけという実にシンプルなラインナップを堅持しています。誰もがアップルの成功をうらやみ、このようなモデル数の絞り込みを正しいラインナップ戦略と理解しながらも、どこも決して同じようには出来ないのです。あるいは、大企業の戦略会議などでは、各部署から代表者を出したり、さまざまな人達への配慮から、あっという間に大人数の大会議になってしまいますが、そうなると議論に時間ばかりかかって一向にデシジョンやアクションに繋がらない、といった経験も誰にもあるでしょう。まるで今の民主党のようですが(笑)。。。ジョブズのスタイルは、会議のメンバーはその会議にとって決定的に重要な少人数しか招かない、観客のような人が混ざっていたら退席させる、という点でも徹底していたようですが、これもわかっていても普通の組織ではなかなかできないことだと思います。

勝つためのセオリーなど、本来は実にシンプルなものだと思います。そのシンプルなセオリーを厳格に徹底して実行できるかどうか、ということにすべてがかかっているのだと思います。今決めねばならないことを明日に伸ばす、すぐに返事をしなければならない案件を放置する、会議に余計な人を混ぜる、はっきり言えばいいことを婉曲的に言う、最初から一つだけ作ればいいものをバックアップも含めて複数作る、などなど、こういう行為が物事をどんどん複雑にしていってしまって、気が付いたら時間やお金や大事な経営資源をどんどん無駄にしていってしまうのです。シンプルさの追求とは当たり前のセオリーでありながら決して皆が出来ることではないのです。

辻野晃一郎コラム

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