2012年7月18日

途方もない時間


海の日を過ぎて、一気に本格的な夏が到来した感があります。流れ出る汗をぬぐうハンカチが手放せません。

本格的な夏の暑さを感じると、私はなぜだか伊勢神宮を思い出します。数年前に伊勢神宮を訪れた日がたまたま猛暑日で、うだるような暑さと伊勢神宮の凛とした空気感が共存している様子が
強烈に脳に刻みこまれたからかもしれません。今年もその光景が脳裏に浮かびました。

来年(平成25年)は伊勢神宮式年遷宮の年です。式年遷宮は、定められた年に御神体を遷す事であり、第1回の式年遷宮(690年)から数えて来年は第62回となります。式年遷宮は8年前から準備が始められ、30以上の諸祭を重ねて進められるそうですが、そうした途方もない時間をかけて、神宮の永遠性の確認、信仰心の確認、建築技術の継承、文化の継承等といった事を行っていくわけです。

先日あるデザイナーの方と式年遷宮についてお話をさせて頂いたのですが、しきたりや儀式は理にかなった美しさが伴わなければ、1000年以上の時間を超えて今日に残っているはずがない、とおっしゃられていました。言い換えれば、時間軸を超える為の人々の努力の結晶がしきたりや儀式として残っている、という事でしょうか。

改めて見回してみると、日本には途方もない時間をかけて受け継がれてきた文化、風俗、工芸が至る所にあることに気づきます。忙しい現代の生活の中では見逃しがちですが、人生をより豊かにする為にも、理にかなった美しさに気づくことができる感性を磨き、育ててゆきたいと改めて思いました。

北川