2012年3月15日

佐賀県立九州陶磁文化館柴田コレクション

江戸時代、鍋島(佐賀)藩が直営の藩窯をつくり、技術の粋を集めて、焼き上げた「鍋島」は幕府や朝廷への献上品として重用されていく。
時を同じくして、明が滅びた後、磁器の一大産地であった景徳鎮からの輸出が激減。
オランダ東インド会社は、景徳鎮のかわりに、日本の有田の地に注目し、1659年以降、有田で焼かれた多くの焼き物が、伊万里港からヨーロッパに輸出されるようになり、王侯貴族の趣味・嗜好に合わせて、洗練の度合いを深めていった。
こうした背景から、「伊万里=IMARI]と呼ばれた当時の有田産の磁器は、日本の磁器として世界的にも非常にポピュラーである。

江戸末期の1830年代くらいまでに肥前有田で焼かれた陶磁器を特に「古伊万里」という。現在は有田産のものを有田焼、伊万里産のものを伊万里焼と呼ぶ。

伊万里焼・有田焼といえば、白地に色絵の鮮やかなものをイメージする方も多いだろう。
が、3月13日からALEXCIOUSでご紹介している、有田製窯のシリーズは、モノトーンを基調に現代の技術でしか施せないプラチナ箔を使用。柄のあるものは、伝統の吉祥文様や草花紋を用いている。シックさと華やかさを兼ね備え、現代のモダンなインテリアにもしっくりとなじむ。

こうした有田産磁器の、江戸時代初期から幕末までの変遷をたどれる一大コレクションが、「柴田コレクション」である。東京在住の柴田明彦・裕子夫妻が生涯をかけて集めた1万点以上のコレクションを、生産地である有田で、歴史文化の遺産として末永く保存されるようにと、有田町にある「佐賀県立九州陶磁文化館」に寄贈された。
柴田コレクションは同館の第5展示室に、常時1000点ほどが公開されている。
私も一度訪れたことがあるが、こぢんまりとした展示室は、まるでご夫妻の応接間のように心地よく、心ゆくまで鑑賞できる素敵な空間だった。

30年近く前、アメリカ現代陶芸展(サントリー美術館)では、星条旗模様の陶器のウェスタンブーツに注目が集まり、焼き物という伝統をもたないアメリカでの、陶磁という素材への取組みが新鮮だった。

世界中あらゆるところに陶磁器ファンはたくさんいる。
江戸時代からグローバルにもてはやされ続けるIMARIの“クールな今”が、そうした目利き方たちの目にとまりますように!
越山