小学校の頃、学校の図書館、近所の区立図書館とは別に、気に入ってしょっちゅう利用していた図書館があります。ワゴン車に本を積んで、定期的に近所の公園にやってくる移動図書館です。バスの中を自由に出入りして、思う存分好きな本を選んでたくさん借りていました。図書館の気さくなおじさんは、私が興味がある本の内容を話すと、よく覚えていてくれていて翌週には「こんなのどう?おもしろそうだよ」と探して持ってきてくれたりしました。もちろん大きな図書館に行けば、種類や数もたくさんあるのですが、私は公園にやってくる移動図書館が特に楽しみでたまりませんでした。コンパクトなサイズのワゴン車の中に積まれた本の中からお気に入りの本を見つけるのは、まるで宝探しのようで、わくわくしたものです。その後、中学に上がると、学校の図書館や駅近くの図書館を利用し始め、次第に移動図書館にわざわざ足を運ぶことはなくなってしまいました。あの移動図書館は、今でも子どもの集まる公園にやってきているのでしょうか・・・。ふと、懐かしくなりました。
イタリアの図書館司書の書いた『知の広場』(みすず書房)では、著者は図書館を「屋根のある広場―本やビデオを借りるのと同じように友だちに会いに行くということが大切に思われる場」と規定しています。当たり前のようでいて、インターネットで気軽に情報検索したりネットで本を購入したりなどして、事足りるような気がする昨今、改めて図書館の存在が貴重に感じられます。最近では遅くまで開いている図書館や、会議室を貸している図書館などありますが、図書館の概念そのものも時代とともに変わってきているように思われます。今度、散歩がてら図書館に行って、ゆっくり時間をかけながら好きな本や懐かしい本を見つけてみようと思います。
森山