2011年10月7日

いまを生きている芸術家の叫び

それは、まだ暑さの残る9月の中頃でした。日差しの強い日曜日の午後、ひとりヨコハマトリンナーレへと足を運んできました。

そして、入り口にあった作品がこちらです。

何かお分かりになるでしょうか?
そう、雑然と吊るされたハムやソーセージです。
遠巻きに一見しただけでは、作品なのかどうかすら分からないこの作品。


作品解説を読み、驚愕しました。

「この暑さの中、普通ならば腐ってしまう肉のかたまりを腐らせず、ハムに仕上げることができるなら、それは人間の偉大な力だと思う。
いつでもハムは腐ってしまうかもしれない危機のプロセスを乗り越え、美味なハムへと変身を遂げる。
東日本大震災後のこの状況の中、我々の心と我々の世界、未来は腐らず、発酵して美味なハムのような復興を遂げることができるのか?」


そこに書かれていたのは、製作者であり自らも阪神淡路大震災を経験した島袋道浩さんの震災に対する真摯な想いであり、願いでした。

作品名は、『ハムはできるか?:復興と発酵』。

そもそも完成した作品を楽しむのではなく、この真夏の横浜でハムができるのかという時間軸まで含めた現在進行形の作品であるというだけで私にとっては衝撃的だったにも関わらず、さらにそこに込められた祈りにも似た願い、そして作品名にも見られるユーモア。
この作品を見るだけでも、十分ヨコハマトリエンナーレに足を運んだ甲斐がありました。

会期は11月6日までですので、芸術の秋をまだ楽しんでいない方は、一度足を運んではいかがでしょうか。
関口