さて、先日友人の作家が行っている素敵なイベントにお邪魔してきました。そのイベントはあるテーマに沿って、作家がその場で小説を紡ぎ出し、写真家が切り取った場面を紹介し、音楽家がそれらに合う音楽を演奏する、という即興エンターテイメントのイベントです。
今回何より興味深かったのは作家が文章を書き直す場面でした。
観客からテーマの「夏の名残り」で思い出す単語を挙げてもらい、それをその場で作家が小説にしてゆくのですが、当然書いている途中で使う表現を変えたり、主語が変わったり、といった修正が入ります。それはとても不思議な体験だったのですが、修正されていくプロセスをつぶさに追っていると、あたかもその作家の思考の中に入り込んでゆくようなそんな感覚を覚えたのです。
「これから出勤。今日はおしゃれをしてマキシワンピースを着ることにする・・・」
↓
「これから出勤。今日はマキシワンピースを着ることにした、隣のあの人は気づくだろうか・・・」
などと書き換わると、一気にその先のストーリーまで頭に浮かんできます。
会社で隣の席に座るあの人への淡い思いは成就するのだろうか、どちらからアプローチするんだろう、そうした想像は文章が進むにつれ、当たったり、見事に裏切られたりを繰り返します。
次のパラグラフが出来上がるのが待ち遠しくてしょうがない。新たな小説の楽しみ方に出会った蒸し暑さの残る夜でした。
北川