2011年6月17日

東洲斎 写楽

先週末の日曜日に最終日であった東京国立博物館の写楽展を見に行きました。寛政6年(1794年)5月にジャジャーン!と大首絵28枚でデビューした写楽が、姿を消すまでのわずか10ヵ月の間に制作された作品は146点。特にデビュー作の28枚は手の動きや顔の表情、口元がリアルで、今にも声が聞こえてきそうな迫力と、どことなく愛嬌があり自分も欲しくなりました。役者絵は当時の価格で1枚300円から500円ということですから、今に例えるなら竹下通りでアイドル写真を売ってるようなものでしょうか。

浮世絵版画は、絵師、彫師、摺師の制作工程によって完成しますが、このまとめ役が版元です。写楽や歌麿らは、版元である蔦屋重三郎が仕掛け人となってプロデュースしたといわれています。今でいうとAKB48をプロデュースした秋元康氏のような人なのかもしれません。

忽然と姿を消してしまった写楽でしたが、大田南畝先生の「浮世絵類考」には、「あまりに真をかかんとて、あらぬ様にかきなせしかば、長く世に行われず、一両年にて止む」と書かれていました。今回、東博の学芸員さんのおかげで、オランダ、イギリス、フランス、アメリカなど各国から写楽の作品がこの展覧会で集められ大方の作品を見ることができました。これほどまで世界中に点在しているとは嬉しいような寂しいような、しかし、大切に保管されているならば、世界に日本の江戸時代の様子や文化に触れてもらえる機会が広がるならば良い話なのかもしれません。

松谷