2011年6月6日

10万年後!?

※ もしこれから下記映画をご覧になるという方がおられましたら、
  多少ネタバレの部分がありますのでご注意下さい。


「10万年後の安全」という映画をご存知でしょうか。


諸説ありますが、安全な状態になるまで10万年かかるといわれる高レベル放射性廃棄物。フィンランドでは、自国の原子力発電所から出る放射性廃棄物の最終処分場を建設しており、その内部にカメラが入り撮影されてできたのがこの映画です。


10万年という時間軸で施設を作る。


それはマイケル・マドセン監督の言葉にもありますが、建築学的にも、哲学的にもこれまでに例を見ないプロジェクトです。そうした観点から刺激を受け、今日は原発の是非やこれからの在り方についての事ではなく、人間の時間軸について感じたことを書きたいと思います。


「ここには生物にとって危険なものが埋められています」
「絶対に掘り返したり、取り出したりしないでください」
「扱い方を知らないまま開けてしまったり、触ってしまうと命に関わります」
「しかもその影響はあなたへだけではなく、外界に広がってゆく可能性があります」


この施設が記憶からも消し去られて、完全に忘却されてしまえば一番良いのでしょうが、この施設にたまたま近づいてしまった、あるいは何かあると感じて掘ってしまった生物に対し、上記の様なメッセージを伝えることが必要になります。


しかも今後10万年に渡って。


忘れ去られるのが理想だとすると、人の手によるメンテナンスを前提とすることはできません。10万年前、これも諸説ありますが現代人の祖先と言われるホモ・サピエンスが、アフリカを出て世界に散り始めたのがその頃と言われています。その頃の人類と現代の我々が共通で理解できるコミュニケーション手段は存在するのか。それと同じ命題を今度は現代から10万年先回りして予測し、解かなければなりません。

それは杞憂に等しい、というのも一説かもしれませんが、未来に責任を持つ大人の一人として、10万年後を意識する人間の活動が今そこで起こっている、ということはぜひ知っておくべきことではないかと感じました。


北川