読者の皆さんもこんな経験はないだろうか。外国人と会話をしていて、自分が自分の国のことで知らないことが山ほどあるなあとつくづく思うことが。
ここ数年、私は自分の国の数多くの優れたモノに出会う機会に恵まれた。伝統工芸品はもとより、これまで培ってきた技術を他の市場向けに転用して製品化されたモノ、今までそういうものだとされていた事柄や見方に対して反対の側面から光をあてた作品や表現活動にも大いに刺激を受けた。
かの思想家トクヴィル先生は、生きて活動し生産するものは全て、どんなに新しく見えても、新しさの背後には古い起源を有しているものであると言う。様々なアーティストや制作者に、なぜこのような形になったのか、なぜこういう模様になったのか、どのように作られたのか、いろいろ尋ねてみると、過去の伝統や技術といった背景や流れについて伺うことができ嬉しくなる。
圧倒的な情報量とスピードでアッという間に忘れ去られていく時の流れの中で、その瞬間の輝きやときめきを、そしてその実力の一端を垣間見ることができる幸せを、じっくりとかみしめたい。
松谷