日本の優れた商材ということで、改めて日本の歴史、文化を振り返ってみますと、様々なところで「日本の多様性」を感じる場面に出会います。
ちょうど1年前、遷都1300年に湧く奈良を訪問する機会があり、その際東大寺の「修二会」、一般的には「お水取り」と呼ばれる祈りの儀式を見学させていただきました。天平勝宝4年(752)以来、今日に至るまで1259回目に渡り、一度も途絶えることなく続けられている儀式です。
数メートルはあろうかという巨大な松明に火をつけて二月堂の欄干を走る、というシーンが有名ですが、今回は幸運にも真夜中に二月堂の中で行われる儀式も、見学させていただくことができました。火のついた大きな松明を持ち、呪文のような祈りの唱句を唱えながら、木造の二月堂の中を走り回り、祈りが行われます。
その光景は、インドの様でもであり、イスラムの様でもあり、日本の様でもある、という大変不思議な感覚が呼び起こされる光景でした。長い長いシルクロードを移動してくるプロセスの中で様々な文化や考え方が吸収され、終点としての日本でこうした儀式に昇華しているのかもしれない、と感じました。
様々な要素を受け入れ、オリジナリティあるものに昇華させる、これは日本の誇るべきオリジナリティです。考えてみれば、今のアニメや漫画も日本という枠、歴史的な背景を超えて、とてつもないストーリーが生み出され世界から評価を受けています。
終点は逆から見れば起点です。
シルクロードの起点としての日本から、今新たに発信するという大きな視点を持って、ワクワクしながらこのプロジェクトに取り組みたいと思っています。
ディレクター 北川